最近、『アナログの逆襲』という本を再び手に取った。
タイトルの通り、デジタルが極限まで進化したこの時代に、
人々が再びアナログに戻っていく理由を語っている本である。
レコード、紙の本、手帳、フィルムカメラ――
一時は「不便で、遅くて、非効率」と思われたこれらが
再び人々に選ばれているという事実が、この本の核心テーマだ。
この本を読みながら、
「デジタルは便利だが、アナログには人がいる。」という言葉が頭に残った。
私は長年、店舗用のPOP広告製品を企画・デザインしてきた。
木目調のアルミ製A型看板や、ガラス窓に設置するライトパネル、
そして小さいけれど目を引く、さまざまなタイプの店舗サインたち。
一見、単なる情報伝達ツールのように見えるかもしれませんが、
時にはこうした些細な要素が、店の運命を左右することもある。
私がやってきた仕事は結局、**人の足を“立ち止まらせること”**だった。
POP広告もまた、アナログの一部だ。
スマホの画面をすっと流れていく広告ではなく、
お店の前を通りかかった人の目を惹きつけ、
その場で直接“感じさせる”物理的なメッセージだ。
それはただの案内文ではない。
お店が、お客様に直接語りかける方法だ。
「今日も心を込めてご用意しました」
「このメニュー、ぜひお試しください」
そんなフレーズひとつにも、想いが込められる。
POP広告は小さなものですが、
人と人との間にある、最も“人間らしい”コミュニケーションだ。
その瞬間、その場所、そのお店でしか出会えない、一度きりの会話。
記憶に残るのは、スクロールされた情報ではなく、体験だ。
どんなにデジタル技術が発達しても、
人を立ち止まらせる力は、最終的には“現場”にある。
そして、POP広告は、まさにその現場で交わされる、
小さくても確かな対話の出発点だ。
AIだろうが、ロボットだろうが、何かが発達しようとも、
私たちが人間である限り、心のどこかには
いつもアナログが残り続けるだろう。